飲食店の閉店を考える

そういえば、一度いわゆる「リタイア」とか「ファイア」という状態を経験しました。
店舗をひとつ売却し、 現金もたっぷりある。既存の店舗は自分が働くことなく着々と黒字を出し、内部保留もそれなりにあるという状態です。

正直もう働かなくても「必要最低限の人間らしい生活」は送れていた。

僕、本当に生活レベルが低いので。服とかも毎年同じのばかり。ケチなんです。欲があまりない。毎日ランニングして、近所の茶屋で蕎麦をいただくというルーティン。

でもそれってただ死んでるみたいに生きてるだけだしなぁ、と。生きてるみたいに生きたいですよね。毎日向上というか改善したいなぁって思っていて、一つでいいんだけどね。
だから、今まで以上に他のお店や街のことを注意深く見ている毎日です。

それで最近改めてお店が無くなる(潰れる)のってなんだろうなぁとか思う訳です。
いいお店なのに無くなる、とかローカル番組で取り上げられる「冗談でしょ…」みたいなお店が無くならないとか、その辺のメカニズムを少し今回は考えてみました。

大事なことは「どうなったらやめるのか??」を考えておくことです。

今日はいつもほど長くないんですけど、ではどうぞ。

これは見出し

お店はなんで無くなるのか

さて。

「お店やりたいんですよ」という人はたくさんいます。若い子たちの間ではもう時代的にそういう人って少なくなってると思うんだけど、相変わらず僕の周りにはちらほらいて、でも実際やる人なんてほとんどいないです。

お店を作るまでって結構途方も無い作業なんですよね。
物件を探す、とかもそうだし自分の力が及ばない、神のみぞ知る、みたいなことがたくさんある。時間も費用もかかる。小さい店でも1000万くらいかかるんで。

それで、色々乗り越えてようやくお店を作ってもすぐ無くなってしまう。憧れの自分の城だったはずなのに、せっかく作ったのに…残念だよなぁと思う。

で、なんでだろうと考えると、お店が無くなる時の大きな理由としては

①体調不良

これはそのままです。店主がひとりでやっていたり、夫婦で営んでいたりすると、大病なんかで続けることができなくなる。マラソンと同じなので怪我するとそこでリタイア。
開けずにそのままにしておくわけにはいかないんです。家賃やいろいろな固定費がかかるので、マラソンでいうと、走行レーンに止まっていていつ後ろから車が来てもおかしくないみたいな状況です。レーンから出ないといけない。
(その物件が持ち家だったりする場合はまた別ですが)

②移転

これは無くなるというよりは「その場からいなくなる」という意味になってしまいますが建物の老朽化や、よりいい場所、物件が見つかった場合にお店を引っ越す、というのはあり得ます。
大家さんと揉める、とか近隣の住民やテナントの民度が低くて移転したい…とかそういうことも十分あるでしょう。
廃業するわけでは無いので移転先に行けばまたそのお店の味や雰囲気は楽しめる、というわけです。

建物っていつかダメになるんですよね。税金もかかる。買ったのに税金が取られるから本当は「自分のもの」ではないんですよね。色んなものに言えますけど。誰のものだと思いますか?

③お金がなくなる

そしてこれが1番の理由です。
お金、というのは自己資金、売り上げ、色んなものをさします。
手元にお金(預貯金含め)が無くなると家賃が払えない。仕入れの費用が払えない。お給料(スタッフ、自分、問わず)が払えないのでご飯を食べることができなくなる。

これは「いいお店だから」は関係ない話なんですね。
逆にいうと「誰が見ても不衛生でお客さんが入っていないお店」でも資金があれば潰れる事は絶対にない、という事。もちろんその状況(売り上げがない)を良しとしない店主の場合は資金がいつか尽きる前に廃業、移転という選択肢を取るとは思いますが。
それでも例えばすごい資産家が遊びでやっているようなお店であれば(資金が尽きることがないのであれば)そのお店はずっと無くならない。

「キャッシュは血液である」とはよく言われることです。
お金(目に見える見えない関わらず)を切らすと「即死」です。

これはお客さんが入っていて、売上がちゃんとあって、経費(売り上げを作るための支出)がそれを下回っていればなくなることはありません。

*これ怖いところなんですけど売り上げがすごいあるのにその入金は来月で、支払いは今月みたいなことになると「黒字倒産」ということになります。
お金が”現在”どこにあるのか、というのも考えないといけない。

払えなくなったら終わりです。

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輸血方法

体調や移転は仕方ないんですけどお金については対策ができる。
先ほども書きましたが売上を支出が下回っていればひとまず安心なんですけど、売上を作る以外に「輸血(補給)する方法」があります。

①借りる

銀行や公庫から「運転資金」という名目で借りることが出来ます。
「晴れの日に傘を貸し、雨の日に取り上げる」と良く言われるんですね。(半沢直樹見ました?)
だから余裕があっても「借りておく」といいです。むしろ余裕があるときに借りておくべき。そしてきちっと返す。そうすると「雨の日」でも借りることができる。銀行にとって「ちゃんと返してくれたという実績」を作るのが目的でもあります。
返してくれるか分からない人よりは「以前ちゃんと返してくれた人」に貸したくなる気持ちわかりますよね。
そして”貸す”というのが銀行や公庫さんのビジネスモデルです。金利や利子、手数料ビジネスなわけです。

お金がないからお金を借りる、みたいなイメージが一般的ですよね。この辺の話は日本人の9割には伝わらないので割と諦めています。

②エコな体にしておく

元々の支出を低く設定しておけばいい。
店主が1人で営業すれば人件費もかからない。

そんなに忙しくなさそうでも続いているお店にありがちなのは「おばあちゃんの持ち家を改装しました」みたいなやつですね。
家賃が1番厄介な固定費なのでそれをカットできる、というのは大きなメリットです。

でもこれって僕の中ではちょっとダサいというか(失礼…)、実家に寄生して仕事をしていないのに「自立してます!」みたいな。
そういう危うさを感じるんですよね。
この辺がシビアじゃないと”ゆるい”お店になったりします。

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色んなお店や街並みを見ていて、考えることが最近多い。
なんでこのお店は残ってるんだろう、なんであのお店は無くなったんだろう、前から分かっていたことだけど「いいお店かそうじゃないお店か」は全然関係ないよなぁと思う。今日繰り返し書きましたが1番はどれだけの”資本があるのか”に左右されるわけです。

使えるお金(便宜上。収入源と言い換えてもいい)をどれだけ保有してあるかにかかっています。単純に血流を増やすでもいいし、そもそもヘルシーな体にしておくのでもいい。
そして究極はそのどちらも備わっているといいということです。

「どれだけいい商品を作るか」じゃなくて「どれだけ資金繰をきっちりできるか」をちゃんと考えないといけない。

いいものを作っても売り場がなければ何も出来ませんからね。僕はそこまで最初に考えなかったタイプで、本当に苦労しましたので…これから自分で、という方は是非そこもシビアにやってほしいなぁと思います。

補給があればタイムは置いておいて、走り続けることができるのです。

どうなったらやめるのか?は最初に考えておかないといけないです。

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